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雑記91

ブライアンイーノが「アンビエント」と提唱した音楽。

今では「環境音楽」というジャンルに収束されてしまった感じが強いけど、提唱された当時は「既存の枠組みでは括れない音」「(まだ無名の)匿名性の強い音楽」に対して付けられた言葉だったそうだ。

現代の言葉に置き換えるとしたら「ニューエイジ」だろうか。名もなき音楽を定義するため生み出された言葉だったのである。

 

これはつまり「パンク以降の新しい音楽性」をコンセプトとし、イーノ自身が総合的なプロデュースを務めた「No New York」というアルバムもまた、彼にとって「アンビエント」の1つだったのではないか?とも取れる。

 

「No New York」は極めて実験性の高いアルバムである。一言で形容するのはあまりに難しいのだが、ただ1つ言えることは「環境音楽」とは大きく乖離した音であり、そこに収録された4組のバンドによる音楽は程度の違いはあれ、皆一様にある種の前衛性を秘めた音楽だったということだ。

もし「アンビエント」が前述の意味合い通りであるとすれば、これほど相応しい音楽はない。

ところがイーノ自身、当時の記事やメディアでその精神性について言及はしたものの、明確な音楽性についての線引きはしなかった。

 

そしてイーノはその同年にジャンル名をそのままに冠した歴史的名盤「Ambient :1 music for airports」をリリースする。

このアルバムは広い層から称賛を持って迎えられ、幸か不幸か「アンビエント = 環境音楽 」という図式を決定づけてしまう作品となった。

 

今や「アンビエント」は「環境音楽」を示すジャンルとなった。

本来の意味や精神性について語られる機会は失い、「無視できる音楽」「BGM的な側面の強い主張の少ない音楽」という意味合いへと変わってしまった。


しかしもしも「No New York」を出された時に「アンビエント」というジャンルと紐づける発言が為されていたとしたら。

今日における「環境音楽」という定義ではなく、本来の意味通り「名もなき音楽」を定義づける、より広大で深いジャンルとなっていたのかもしれない。